
夏椿(なつつばき)は学名Stewartia pseudo-camellia Makim.、ツバキ科ナツツバキ属の落葉高木である。6~7月の梅雨期、朝に開き夕方に落花する白色5弁の一日花を咲かせる。仏教の聖木「沙羅双樹、娑羅双樹」(さらそうじゅ)に因んで「沙羅木」(しゃらのき)という別名を持つが、実際のサラソウジュ、学名Shorea robusta Gaertn.f.、フタバガキ科サラノキ属の熱帯に分布する常緑高木とは別種である。
夏椿は素人の剪定を嫌い、下手に枝を切ると成長が止まり枯れてしまう繊細な樹木である。その為に他の樹木とともに、当家の夏椿二本は熟練の庭師さんの管理下にある。本年も5月初旬、木魚撥の様な花蕾が新緑の葉越に顔を見せ始めた。やがて到来する梅雨の時節、雨に濡ちながら咲く夏椿を眺める時、『平家物語』冒頭の一節「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす。」を思い起こさずにはいられない。

参考資料:
林弥栄, 古里和夫, 中村恒夫監修:「原色樹木大圖鑑」, 北隆館, 1985
牧野富太郎著:「原色牧野植物大圖鑑」, 北隆館, 1982
市古貞次校注・訳:日本古典文学全集「平家物語1」, 小学館, 2014