題しらず
春過ぎて夏来にけらし 白妙の衣干すてふ天の香久山
新古今和歌集・巻第三 夏歌 持統天皇御歌
素人が生け花で杜若の蕾を咲かせる管理方法を伺ったことがある。湿地帯の植物でかなり乾燥を嫌う為、通常の水揚げとは別に、蕾を水にくぐらせる、霧吹きで保水をするなどの乾燥対策が必要との御教示を頂いた。その様に細心の注意を払い、切花用の延命剤を用いても、花序から少し紫の顔を覗かせた蕾が開かぬまま萎み枯れることがある。花一輪が咲くという厳粛な営みは、地を離れた花器の人工的な環境下のみならず、自然の植生地にあるとても同じである。内外で花の佇まいを拝するたびに身の引き締まる思いがする。