
櫻屏風 秀吉から光秀に贈る│尾形月耕「日本花圖繪」明治廿五年
尾形月耕作『日本花図絵』は、日本を代表的する桜花にまつわる人物や歴史が描かれた、明治25年から31年にかけて制作された浮世絵の作品集である。尾形月耕は明治から大正期の浮世絵師、日本画家である。繊細で気品のある画調に魅かれ数年前に一連の作品を入手し、毎年桜の季節の頃、画に描かれた挿話やその出典を調べてブログに取り上げてきた。
ところで医学初学者の頃に受けた御指導の一つに「必ず原典、原著にあたるべし」がある。査読者やレフリーの査定がないブログ投稿においても、特に本業と異なる畑違いの記事を挙げる時に肝に銘じて拳々服膺してきた。その基本方針に従い、豊臣秀吉が明智光秀に桜屏風を贈ったというエピソードを渉猟したが全く出処が掴めない。画中の桜屏風を指弾するかの様な人物は、水色桔梗の五つ紋であり明智光秀であろう。
本年になり思いあぐねて生成AIに照会した処、当初は『明智軍記』に出典があると某所のデジタルライブラリーを紹介された。ところがプロンプトが的確でなかったのか、提示を受けた資料を読み通すも一文が何処にも見当たらない。何度もやり取りをした挙句、頂戴した最終結論は「この挿話の出典は明確には特定されず、恐らくは創作または後世の伝承・芸術表現に由来するものである」である。また生成AI曰く「送られた屏風の豪華さに驚いた光秀が謀反の動機を強めたというストーリーで語られることがある」との事であった。桜屏風が本能寺の変に繋がるとは、伏線となる謂れのある屏風であったのか。何とも腑に落ちない挿話である。