花紅柳緑~院長のBLOG

座右の銘「医事は自然に如かず」

苦楝皮(くれんぴ)・川楝子(せんれんし)│センダン


六十四 栴檀の花│「四季の花」夏之部・參, 芸艸堂, 明治41年

「苦楝皮」(くれんぴ)はセンダン科、センダン属の落葉高木センダン(栴檀、オオチ)、学名Melia azedarach L.、あるいは同じくセンダン科、センダン属のトウセンダン(唐栴檀、川楝)、学名Melia toosendan Sieb. et Zucc.の樹皮、根皮から得られる駆虫薬に属する生薬である。薬性は苦、寒、有毒、帰経は肝経、脾経、胃経である。効能は殺虫消積、療疥癬寄生虫を殺虫し腹痛を止める。頭部白癬・疥癬に外用が有効。)である。現在は日本薬局方には収載されていない。寒性、有毒で元来使用には留意を要し、過量・長期服毒でなくとも脾胃虚寒証には禁忌である。
 「川楝子」(せんれんし、苦楝子、金鈴子)は、トウセンダンの成熟果実から得られる理気薬に属する生薬である。薬性は苦、寒、小毒、帰経は肝経、胃経、小腸経、膀胱経で、効能は疏泄肝熱、解欝止痛、行気止痛、殺、殺虫の効果は苦楝皮の方が強い。方剤例には金鈴子散、一貫煎がある。

ちなみに「栴檀は双葉より芳し」と言う場合の栴檀は、ビャクダン科、ビャクダン属の常緑小高木「白檀」(びゃくだん)、学名Santalum album L.である。香木として有名な白檀であるが、木質心材を生薬として用いた時の名前は理気薬に属する「檀香」(だんこう、白檀香)である。薬性は辛、温、帰経は脾経、胃経、肺経、効能は行気止痛、温胃止嘔(気を温め巡らせ止痛し、寒性気滞による胃部、胸部の疼痛を除く。)である。

2001年5月、耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会に参加した時、開催された福岡市内から西鉄天神大牟田線に乗り約1時間、水郷柳川に伺う機会を得た。涼風溢れる川下りの乗合船に乗った折、青々と茂る緑葉の中に花房をのぞかせたセンダンの木が川面に影を落としていた。「楝・樗(あふち、おうち)」はこのセンダンの花の様な薄い青紫色である。表が薄色(薄紫)、裏が青(緑)の五月に用いる襲の色目でもある。



栴檀の 葉洩日ゆゑに ころぶすや 子はあなうらに すずしがりゐる     北原白秋

(第九歌集「橡」風神四季)

我妹子に 楝の花は 散り過ぎず 今咲けるごと ありこせぬかも
(「萬葉集」巻十・1973)

「木のさま憎げなれど、楝の花、いとをかし。枯れ枯れに、さま異に咲きて、かならず五月五日にあふも、をかし。」(「枕草子」第三十四段)