映画『国宝』で世界的な舞踊家、田中泯(敬称略)が演じる人間国宝の歌舞伎役者、六代目小野川万菊が、自ら終の棲家に選んだのは場末の安旅館である。原作を紐解けば、歌舞伎界の重鎮であった万菊を知る由もない同宿人達の脳裏に色濃く刻まれたのは、すべて…
話題沸騰の映画『国宝』(監督:李相日監督、原作:吉田修一著『国宝』、歌舞伎指導・出演:四代目中村鴈治郎、敬称略・以下同文)は、任侠一門を出自とする立花喜久雄が上方歌舞伎名門の部屋子となり芸道に精進し、紆余曲折を経て希代の女形役者を極めて人…
杜若われに発句の思ひあり 俳諧千鳥掛 芭蕉
閑さや岩にしみ入る蝉の声 おくのほそ道 芭蕉
入谷朝顔まつりが本年7月6日、7日、8日の三日間、入谷鬼子母神とその界隈で開催された。毎年、朝顔の通信販売を申し込み、入谷朝顔市の公認札が付いた四色一鉢の朝顔が届く日を楽しみにしている。数年前からは、行灯支柱を越えて勢いよく伸長するつるのため…
夏日即事 館柳湾官斎涼意在心閑 官斎の涼意は 心の閑なるに在り半日靜居熱自刪 半日靜居すれば 熱自ら刪(のぞ)かる塵案払来無片牘 塵案 払い来たれば 片牘(へんとく)無く一函黄老対青山 一函の黄老 青山に対す 徳田武著:江戸詩人選集 第七巻「野村篁園 …
苦熱題恆寂師禅室 白居易 熱に苦しみ 恒寂師の禅室に題す人人避暑走如狂 人人 暑を避け 走りて狂するが如し獨有禪師不出房 独り禅師の房を出でざる有り可是禪房無熱到 可して是れ 禅房に熱の到ること無けんや但能心靜卽身涼 但だ能く心靜なれば 即ち身も涼し…
近畿地方は6月6日頃から雨天が多くなり梅雨入り宣言も近い。この時分の花である紫陽花には毒性があり、厚生労働省「自然毒のリスクプロファイル」で植物性自然毒に分類されている。<紫陽花(あじさい)のはなし>(2022/5/28)で触れたが、牧野富太郎博士は…
『古今和歌集』の仮名序」に「在原業平は、その心余りて、詞(ことば)たらず。しぼめる花の色なくして匂ひ残れるがごとし」の一節がある。恐れ多くも紀貫之御大に異議を申し立てる気など毛頭ないが、思いがありすぎて歌の表現が不十分との厳しい評価は、在…
アヤメ(学名Iris sanguinea)、ジャーマンアイリス(学名Iris germanica)は、花菖蒲、杜若と同じくアヤメ科アヤメ属の多年草である。アヤメとジャーマンアイリスの花は後者と異なり、一番花が萎み始めた時に既に蕚から二番花の蕾が外に顔を出し膨らみ始め…
群馬県吾妻郡六合村(くにむら)は、群馬県草津村の六大字が分村して1900年に成立、1910年に中之条町に編入され、日本で最後に廃止された村である。合併後は、同町の六合地区として古事記・上巻序文にも記される名を今に残している。 いけばなに用いた花の種…
夏椿(なつつばき)は学名Stewartia pseudo-camellia Makim.、ツバキ科ナツツバキ属の落葉高木である。6~7月の梅雨期、朝に開き夕方に落花する白色5弁の一日花を咲かせる。仏教の聖木「沙羅双樹、娑羅双樹」(さらそうじゅ)に因んで「沙羅木」(しゃらのき)…
白い花の季節が過ぎると、藤や桐、花菖蒲や杜若など紫の花の季節が到来する。5月初めに濃紫色の花菖蒲、日の出と青紫色の杜若を取り寄せた。両者ともにアヤメ科アヤメ属の多年草で、一番花が咲き終わり萎れかけた時に摘み取れば、やがて鞘苞から二番花の新た…
昨日非不可恨悔 昨日の非は恨悔すべからず 明日是不可慮念 明日の是は慮念すべからず飲与食不可過度 飲と食とは度を過ごすべからず 非正物不可苟食 正物に非あらざれば、苟(いやしく)も食すべからず無事時不可服薬 事なき時は薬を服すべからず頼壮実不可過…
題しらず春過ぎて夏来にけらし 白妙の衣干すてふ天の香久山 新古今和歌集・巻第三 夏歌 持統天皇御歌素人が生け花で杜若の蕾を咲かせる管理方法を伺ったことがある。湿地帯の植物でかなり乾燥を嫌う為、通常の水揚げとは別に、蕾を水にくぐらせる、霧吹きで…
寛平御時、后の宮の歌合の歌待てといふにとまらぬものと知りながら しひてぞ惜しき春の別れは 新古今和歌集・巻第二 春歌下 読人知らず全世界的に甚だ厳しい医療状況にあったCOVID-19拡大の時期、各種の学会総会・学術講演会、研究会、夏期講習会が一時延期…
櫻屏風 秀吉から光秀に贈る│尾形月耕「日本花圖繪」明治廿五年 尾形月耕作『日本花図絵』は、日本を代表的する桜花にまつわる人物や歴史が描かれた、明治25年から31年にかけて制作された浮世絵の作品集である。尾形月耕は明治から大正期の浮世絵師、日本画家…
「医事不自然」(医事は自然に如かず)は、医事に関する様々なことは自然の力に及ばないという意であり、『解体新書』の翻訳事業で知られる江戸時代中期の蘭学者、杉田玄白先生八十五歳の絶筆である。この言葉は人間がかかわる医学・医術・医療が無意味であ…
2014年12月、<漢方の考え方>と<御礼>2記事で開始しましたGoo blog「花紅柳緑~院長のブログ」から移行し、2025年5月、心新たにHatena blog「花紅柳緑~院長のBLOG」の初投稿を致しました。何卒宜しくお願い申し上げます。
マニフィーク(笹百合ハイブリット交配種) 清明 杜牧 清明時節雨紛紛 清明の時節 雨紛紛 路上行人欲斷魂 路上の行人 魂を断たんと欲す 借問酒家何處有 借問す 酒家 何れの処にか有ると 牧童遥指杏花村 牧童 遥かに指す 杏花村 川合康三編訳:「中国名詩選(…
マニフィーク(笹百合ハイブリット交配種) 「禅宗曰、飢来吃飯倦来眠。詩旨曰、眼前景致口頭語。盖極高寓于極平、至難出于至易。有意者反遠、無心者自近也。」 (後集│禅境叢書「菜根譚」, p166-167) 禅宗に曰く、「飢え来りて飯を喫し、倦み来りて眠る」…
木瓜 馬酔木 利休梅 「聞以有翼飛者矣、未聞以无翼飛者也。聞以有知知者矣、未聞以无知知者也。瞻彼闋者、虚室生白。吉祥止止。夫且不止、是之謂座馳」 翼有るを以て飛ぶ者を聞くも、未だ翼無きを以て飛ぶ者を聞かざるなり。知有るを以て知る者を聞くも、未…
櫻ノ詩 児島高徳│尾形月耕「日本花圖繪」明治丗年 微服潛行して、時分を伺ひけれども、しかるべき隙もなかりければ、主上の御坐ありける御宿の庭前に、大きなる桜の木のありけるを押し削つて、大文字に一句の詩をぞ書きたりける。 天勾践を冗らにすること莫…
偶興 安積艮斎 自甘無用臥柴關 自ら甘んず 無用柴関に臥するに 花落鳥啼春晝閑 花落ち鳥啼いて春昼閑なり 有客來談人世事 客有り 来りて人世の事を談ず 笑而不答起看山 笑って答へず 起って山を看る 菊田紀郎, 安藤智重訳注:「安積艮斎 艮斎詩略」, 明徳出…
医院駐車場の一角、知人の形見である椿の一番花が朝に花開いた。ところが半日も持たずに鳥に齧られてしまった。 近隣のポストに郵便投函の道すがら、菫の花がコンクリート舗装の僅かな隙間に健気に咲いていた。
八月二日 丙申 参河守範頼、起請文を書きて、将軍に献ぜらる。これ反逆を企つるの由、聞こしめし及ぶによつて、御尋ねの故なり。その状に云はく、 敬みて立て申す 起請文の事。 右御代官として、たびたび戦場に向かひをはんぬ。朝敵を平らげ、愚忠を盡してよ…
蒲桜 範頼桜の名あり│尾形月耕「日本花圖繪」明治丗年 曲亭馬琴著『玄同放言』、源ノ範頼・東光寺蒲桜並古碑附の章には、源頼朝の異母弟、範頼公の御生涯、東光寺の巨桜蒲桜と古碑の由緒が詳細に語られている。範頼公の御最期は『保歴間記』にて「建久四年八…
惜しめども思ひげもなくあだに散る 花は心ぞかしこかりける 山家集・上 春 西行
風さそふ花のゆくへは知らねども 惜しむ心は身にとまりけり 山家集・上 春 西行
古木の桜の所々咲きたるを見て わきて見ん老木は花もあはれなり いまいくたびか春にあふべき 山家集・上 春 西行