花紅柳緑~院長のBLOG

座右の銘「医事は自然に如かず」

漢方の世界

苦楝皮(くれんぴ)・川楝子(せんれんし)│センダン

六十四 栴檀の花│「四季の花」夏之部・參, 芸艸堂, 明治41年 「苦楝皮」(くれんぴ)はセンダン科、センダン属の落葉高木センダン(栴檀、オオチ)、学名Melia azedarach L.、あるいは同じくセンダン科、センダン属のトウセンダン(唐栴檀、川楝)、学名Meli…

未病と亜健康│「医と人間」

生け花木版画 『医と人間』(京大元総長・名誉教授、井村裕夫博士編)は、第29回日本医学会総会(2015年、京都市)開催に合わせて出版され、参加者には会場で配布された書である。「医学の最前線」、「医療の現場から──きずなの構築のために」という二つのサ…

羅勒(らろく)

「羅勒(らろく)」は、バジル、学名Ocimum basilicum L.の全草から得られる生薬である。バジルはメボウキ属、しそ科の一年草で、夏季に小さな白い花の穂状花序をつけ黒緑色に結実する。「羅勒」の薬性は、辛、温、帰経は肺経、脾経、胃経である。効能は疏風…

胡荽子(こずいし)

「胡荽子(こずいし)」は、コリアンダー(コエンドロ、胡荽、芫荽、香菜)、学名Coriandrum sativum L.の成熟果実から得られる生薬である。コリアンダーはコエンドロ属、せり科の一年草で、夏季に複散形花序をつけ、小さな白い花が咲いた後に直径3~5mmの球…

牽牛子(けんごし)

鈴木其一 朝顔図屏風, メトロポリタン美術館蔵│「鈴木其一 江戸琳派の旗手」展図録, p100-105, 2016 「牽牛子」はヒルガオ科アサガオの成熟種子から得られる生薬で、瀉下薬の中で通瀉の力が強い峻下逐水薬に属する。性・味は苦、寒、帰経は肺経、腎経、大腸…

鑑真大和上と医薬の道

鑑真大和上東渡│「大和名所圖會三 添下郡、平群郡、廣瀬郡、葛下郡、忍海郡」 下記は医薬に御造詣が深かった鑑真大和上に関する『続日本記』の記述である。留学僧・栄叡の死去を嘆き悲しまれ御眼から光が失われても、経典をそらんじ諸本の誤字を校正なさった…

訶梨勒・訶黎勒(かりろく)/ 訶子(かし)

訶梨勒 足利義政好写 宗徳作 書院柱飾り 「訶梨勒・訶黎勒」(かりろく)、「訶子」(かし)は、モモタマナ属、シクンシ科の落葉大高木、ミロバランノキ、学名Terminalia chebula Retz.のの成熟果実である。収渋薬に分類され、性は苦、酸、澁、平、帰経は肺…

神農・伏羲・黄帝│池大雅筆「三皇図」

特別展「池大雅 天衣無縫の旅の作家」(会期:2017年4月7日(土)~ 5月20日(日))が京都国立博物館で開催中である。『易経』周易繋辞下傳には、八卦を作り文明をもたらした古代中国、神話伝説時代の聖人や帝王として、「伏羲(包犠)」(ふくぎ、ふっき)…

辛夷(しんい)

生薬「辛夷(しんい)」に関係するモクレン属、もくれん科の樹木には下記の種類があり、3~5月の開花直前の花蕾を採取し陰干したものを用いる。第十七改正日本薬局方で「シンイ」の基原植物に挙げられているのは、ハクモクレン以下の五種である。冒頭写真は…

多紀元悳(元徳)│「医家初訓」

多紀元悳著「廣惠濟急方」│東都書肆 2018年NHK正月時代劇「風雲児たち~蘭学革命篇~」において、唯一釈然としなかった点は劇中の漢方医の扱いである。『解体新書』の将軍への献上阻止から杉田玄白等の襲撃まで、既得権や権威を守らんと暗躍する“蘭学革命”に…

ふたたび「桂」│有木詩八首の内・丹桂

有木詩八首 其八 白居易 有木名丹桂、四時香馥馥。花團夜雪明、葉翦春雲綠。 風影清似水、霜枝冷如玉。獨占小山幽、不容凡鳥宿。 匠人愛芳直、裁截為廈屋。幹細力未成、用之君自速。 重任雖大過、直心終不曲。縱非梁棟材、猶勝尋常木。 木有り丹桂と名づく、…

蝉退(せんたい)

「蝉退(せんたい)」は蝉の抜け殻から得られる生薬である。辛涼解表薬に分類され、性は甘、寒、帰経は肺経、肝経、効能は疎散風熱、利咽開音、透疹、明目退翳、熄風止痙(風熱を散じる、但し発汗、清熱の作用は強力ではない。咽頭の熱を取り嗄声、咽頭腫脹…

射干(やかん)

檜扇(ひおうぎ)は京都、祇園祭と縁の深い花である。アヤメ科ヒオウギ属の多年草で、互生する葉の形が檜扇に似ているために名付けられた。花後に袋状の鞘に包まれた光沢ある黒色の種子を実らせる。別名が烏扇(からすおうぎ)である所以である。この黒い種…

厚朴(こうぼく)

「厚朴(こうぼく)」はモクレン科モクレン属、カラホオ(Magnolia officinalis Rehder et Wilson)およびその変種の樹皮、根皮からえられる生薬である。日本産の「和厚朴」はホオノキ(Magnolia obovata Thunberg)の樹皮を用いる。「厚朴」は芳香化湿薬(…

西洋医学と東洋医学

東洋医学を実践するのは決して医師だけではないが、現行の日本東洋医学会が認定する漢方専門医は、医師免許証を有し日本専門医認定機構の定める基本領域に属する学会の認定医あるいは専門医を有することが認定の基本条件である。隣国事情を伺えば、中医学、…

蒲黄(ほおう)

大国主の命が因幡の白兎をお助けになる物語をはじめて読んだのは、子供の頃に買ってもらった絵本である。童謡の大黒さまにおいて「がまのほわたにくるまれば、うさぎはもとの白うさぎ」と唄われた通り、ほわたがうさぎの傷を治したのかとその頃は素直に納得…

桔梗(ききょう) 井上靖著「ある偽作家の生涯」

桔梗(ききょう)はキキョウ科の多年草で、地上の枝葉や星型の花ではなく根を生薬「桔梗」として用いる。化痰止咳平喘剤に分類され、薬性は苦、辛、平で、肺経に属し、効能は宣肺祛痰、利咽、開宣肺気、排膿消腫(肺気の鬱滞を除き、肺の宣発作用を高めて、…

伝統医学と根上がり五葉松│シンポジウム「傷寒論再々考」に思う

世界三大伝統医学とされるユナニ医学、アーユルヴェーダ、中医学に始まり、各地の伝統医学は単なる医術にとどまらず、それを育んだ民族固有の文化、自然観を色濃く反映する。日本最古の医学書とされる医心方は丹波康頼が著した膨大な労作であるが、扱ってい…

根上がり五葉松│栗林公園にて

第67回日本東洋医学会学術総会が高松で開催された。学会開催前日、国の特別名勝、栗林公園に伺った。はるか昔、小学校の修学旅行で初めて訪れた時に園内で買った小さな奉公さんの人形は、いまも家の陳列ケースの中で静かにたたずんでいる。栗林公園は紫雲山…

山茱萸(さんしゅゆ)

山茱萸(さんしゅゆ)は、若葉の芽吹きに先立ち、黄色の小花からなる集合花を枝一杯に咲かせるミズキ科の落葉小高木である。別名、春黄金花(はるこがねばな)、秋に楕円形の赤い実を鈴なりにつけることから秋珊瑚(あきさんご)とも言う。この実から種を除…

薬のほかの配剤有り│医聖 曲直瀬道三

「まことに料理の上手は庖丁の他の料理をし、醫者の上手は薬のほかの配剤有りと見えし。」と言う感嘆の言葉で締めくくられているのは、「売家の松」で取り上げた神沢杜口著『翁草』の異本にある、江戸時代の名医、曲直瀬道三先生のエピソードである。御病人…

万年青(まんねんせい、おもと)

「万年青(おもと)」はユリ科の常緑多年草で、正月花、祝儀花として親しまれている。葉は一年を通して光沢のある深緑色なので万年青と称する。冬には珊瑚玉の様な深紅の実ないし黄色の実を結ぶ。路地や鉢植で鑑賞用に栽培され、多くの園芸品種が生み出され…

屠蘇散│屠蘇酒

屠蘇(とそ)は一年の無病息災を願っていただく正月膳にかかせない祝酒であり、また漢方薬からなる薬酒である。当家では栃本天海堂製の屠蘇散を、菊正宗大吟醸嘉宝に大晦日から漬け込み一晩浸積する。漢代の名医華佗が創製した大黄、白朮、桂枝、防風、花椒…

佩蘭(はいらん)

佩蘭は、キク科ヒヨドリバナ属の多年草、藤袴(フジバカマ)の全草から得られる生薬である。芳香化湿薬ないし化湿薬に分類され、薬性は平、薬味は辛、帰経は脾、胃、肺経で、効能は芳香化湿、醒脾開胃、発表解暑である。化湿は湿を変化させるという意味で、…

解毒といえば│そして「補」と「瀉」

漢方治療においては、身体内の不足(虚)を補う「補」と不要(邪実)を除く「瀉」のバランスが重要視される。実際の臨床の場では「補」的、あるいは「瀉」的治療だけで解決するということは少ない。多くの場合において、虚と邪実が入り混じった虚実錯雑とい…

半夏生(はんげしょう)

半夏生は、この時期の茶花の花材として用いられることが多い、涼しげな風情の草花である。遥か昔に瓢亭での夜の懐石で、雨に濡れた路地で白く揺れていた半夏生の名前を初めて知った。夏至から11日目の半夏生の頃(平成27年は7月2日)、下部の葉は緑色のまま…

石榴(ざくろ)

石榴(ざくろ)はザクロ属ざくろ科の落葉高木で、学名Punica granatum L.である。花期は6月で、医院の駐車場でも朱色の花を咲かせ始めた。いまだ青い果実であるが、秋になると次第に赤褐色に変色してゆく。完熟すると果皮が自然にはじけて、中からは隙間なく…

薬種商の館 金岡邸│富山紀行

第66回日本東洋医学会学術総会(6月12日~14日)が富山で開催された。京都駅から金沢駅まで特急サンダーバードで約2時間、さらに北陸新幹線に乗り換えて15分で富山駅到着である。学会会場のANAクラウンプラザホテル富山にチェックインし、2日後に控えた演題…

桑葉(そうよう)│桑椹(そうじん)│桑枝(そうし)

医院の駐車場では、桑の木が赤や紫色の実をたわわに実らせ始めた。桑はその葉、茎、実のいずれもが生薬となり、有用で無駄のない樹木である。桑の葉から得られる生薬は「桑葉(そうよう)」で、辛涼解表薬に分類され、効能は疏散風熱、清肺潤燥、平肝明目(…

白及(びゃっきゅう)

紫蘭(シラン)が今年も露地の片隅で紅紫色の花を咲かせ始めた。花色が白い白花紫蘭(シロバナシラン)も同時期に咲く。紫蘭はラン科の多年草で、塊茎から得られる生薬が「白及(びゃっきゅう)」である。収斂止血薬に分類され、薬性は苦、甘、渋、寒で、肺…