花紅柳緑~院長のBLOG

座右の銘「医事は自然に如かず」

日記・エッセイ

無常の心を

題知らず末の露もとの雫や世の中の 後れ先立つためしなるらん 新古今和歌集・巻第八 哀傷歌/ 和漢朗詠集・巻下 無常 僧正遍昭

古都奈良に春来る 糊こぼしの花

銘菓「糊こぼし」 奈良・萬々堂通則華厳宗大本山、東大寺の二月堂で行われるお水取り(修二会)は、本年3月1日から本日14日まで行われ、古都奈良に春を告げる伝統行事である。東大寺の創建に尽力された良弁僧正をお祀りする開山堂に咲く名椿「良弁椿」は、紅…

令和七年大晦日の御挨拶

本年一年に賜りました御厚情に心より感謝申し上げます。来年も何卒宜しくお願い申し上げます。寒風の候、どうぞくれぐれも御自愛下さい。 入道前関白太政大臣、百首歌よませ侍りける時 年の暮の心をよみて遣はしける石ばしる初瀬の川の波枕 はやくも年の暮れ…

会者定離の定めにおもう

柴犬まるが旅立ってから早二週間が過ぎた。医院開業の年に拙宅の一員となった愛犬で、いわば糟糠の犬である。彼が残したフード、ペットシートやおむつ類は、動物愛護に携わっておられる団体組織にお納め申し上げ、関係諸兄諸姉の御手を経てお仲間の為に役立…

柴犬まるが教えてくれたこと  

〇ペットロスの患者さん 漢方診療の腹診を行っている時、入室時から浮かぬ顔をなさっている理由をぽつりぽつりと患者さんが語り始めた。16歳の愛犬を2週間前に見送ったとの事である。あの時こうした、こうもしてやりたかったと、小声で話し続ける患者さんの…

玉の輿と逆玉の道 格差を乗り越えて

女性が乗る“玉の輿”、また近年は男性が乗る“逆玉”という言葉がある。明治時代、江戸の商家に生を受け、オーストリア・ハンガリー帝国の大貴族に嫁いだ旧姓青山、クーデンホーフ光子伯爵夫人は、渡欧後、子供たちとともに多岐にわたる学問、語学や礼儀習慣を…

医師人生の原点に還る 話題の映画「国宝」に触発されて

鮭は大海原に下り成長した後に、再び生まれた河川の源流を遡上する。親を知らぬまま生を受けた渓流の景色を、再び彼等は眼にすることが出来ただろうか。人も亦、時経ておのれが拠って立つ所を貫き流れる流路を遡る時が来る。その流れは継承する血流そのもの…

有吉佐和子著『出雲の阿国』 人々を慰藉する生業とは

有吉佐和子著『出雲の阿国』(中央公論社、1969)の主人公、出雲の阿国は、安土桃山から江戸時代にかけて活躍した、現代歌舞伎の起原とされるかぶき踊りを創始した芸能者である。鑪(たたら)の大旦那、田部庄兵衛のお土居屋敷の邸内を埋め尽くした鑪衆を前…

話題の映画「国宝」の世界・其二 小野川万菊がみせた終焉の華

映画『国宝』で世界的な舞踊家、田中泯(敬称略)が演じる人間国宝の歌舞伎役者、六代目小野川万菊が、自ら終の棲家に選んだのは場末の安旅館である。原作を紐解けば、歌舞伎界の重鎮であった万菊を知る由もない同宿人達の脳裏に色濃く刻まれたのは、すべて…

話題の映画「国宝」の世界 美を極めるとは

話題沸騰の映画『国宝』(監督:李相日監督、原作:吉田修一著『国宝』、歌舞伎指導・出演:四代目中村鴈治郎、敬称略・以下同文)は、任侠一門を出自とする立花喜久雄が上方歌舞伎名門の部屋子となり芸道に精進し、紆余曲折を経て希代の女形役者を極めて人…

小暑の朝顔 令和七年の入谷朝顔市

入谷朝顔まつりが本年7月6日、7日、8日の三日間、入谷鬼子母神とその界隈で開催された。毎年、朝顔の通信販売を申し込み、入谷朝顔市の公認札が付いた四色一鉢の朝顔が届く日を楽しみにしている。数年前からは、行灯支柱を越えて勢いよく伸長するつるのため…

終焉の花と生々流転のダイナミズム

『古今和歌集』の仮名序」に「在原業平は、その心余りて、詞(ことば)たらず。しぼめる花の色なくして匂ひ残れるがごとし」の一節がある。恐れ多くも紀貫之御大に異議を申し立てる気など毛頭ないが、思いがありすぎて歌の表現が不十分との厳しい評価は、在…

夏椿と梅雨の詩情

夏椿(なつつばき)は学名Stewartia pseudo-camellia Makim.、ツバキ科ナツツバキ属の落葉高木である。6~7月の梅雨期、朝に開き夕方に落花する白色5弁の一日花を咲かせる。仏教の聖木「沙羅双樹、娑羅双樹」(さらそうじゅ)に因んで「沙羅木」(しゃらのき)…

御挨拶申し上げます

2014年12月、<漢方の考え方>と<御礼>2記事で開始しましたGoo blog「花紅柳緑~院長のブログ」から移行し、2025年5月、心新たにHatena blog「花紅柳緑~院長のBLOG」の初投稿を致しました。何卒宜しくお願い申し上げます。

令和七年の白い花が咲く

木瓜 馬酔木 利休梅 「聞以有翼飛者矣、未聞以无翼飛者也。聞以有知知者矣、未聞以无知知者也。瞻彼闋者、虚室生白。吉祥止止。夫且不止、是之謂座馳」 翼有るを以て飛ぶ者を聞くも、未だ翼無きを以て飛ぶ者を聞かざるなり。知有るを以て知る者を聞くも、未…

2025年春の一日

医院駐車場の一角、知人の形見である椿の一番花が朝に花開いた。ところが半日も持たずに鳥に齧られてしまった。 近隣のポストに郵便投函の道すがら、菫の花がコンクリート舗装の僅かな隙間に健気に咲いていた。

謹賀新年│令和七年乙巳の正月花

新正書懐 大沼枕山無事逢春懶更加 無事 春に逢うて 懶 更に加わる枕頭香迸小梅花 枕頭 香は迸(ほと)ばしる 小梅花一年又是甘人後 一年 又是れ人後に甘んぜん晏起追暄汲井華 晏起 暄(あたた)かきを追うて 井華を汲む 日野龍夫注:江戸詩人選集「成島柳北 …

令和六年甲辰歳末

石上布留野の小笹霜を経て ひと夜ばかりに残る年かな 新古今和歌集・巻第六 冬 摂政太政大臣 本年賜りました御厚情に謹んで御礼申し上げます。 良いお年をお迎えください。

やはりさっぱりと 大和未生流の風趣

華道の文目も分かぬ初学の頃からお導き頂いた大和未生流の花は、『東洋の道と美』の言葉そのままに「さっぱり、あっさり、すっきり」である。<さっぱりと│引き算の美学(2018/9/05)>に記した様に、耳鼻咽喉科医として花の道においても先輩の母が折に触れ…

根拠なき自信

昨年度のNHK大河ドラマ《鎌倉殿の13人》、第9回のタイトルは「根拠なき自信」であった。根拠に基づかない自信とは、evidenceを欠いた、他人様の承認御無用の自己陶酔である。鵜の目鷹の目の槍衾が突き刺さる世間の只中で、萎んで縮みがちな己をいかに膨らま…

涙の枕草子

<My Favorite Things(わたしのお気に入り)>は、ミュージカル映画、The Sound of Music(1965年)中の一曲である。歌いだしの‘Rindrops on roses and whiskers on kittens’から若い女性が推しの事物が続き、珠玉の小さな物語一つひとつが彼女の脳裏に鮮や…

桂の黄葉

当院玄関横の黄葉(もみぢ)した桂の木、落葉は芳香を放つ。今宵は上弦の半月 黄葉する時になるらし 月人の桂の枝の色づく見れば 万葉集・巻第十

清少納言と紫式部

清少納言と紫式部は宮仕えの時期が異なり、実際には面識がなかったというのが通説である。『紫式部日記』の清少納言に関する悪罵と冷笑に満ちた一文からは、一筋縄では行かない紫式部の人となりの一端が窺える。ともに誇り高く、御主を守り抜かんという心ば…

亢龍悔い有り

豊臣秀吉が、織田信長や徳川家康等、継嗣の若様育ちの武将と決定的に異なるのは、下積時代の生活環境である。碌な装備もないままに酷暑、極寒下の野営や夜駆けもあったろう。”ブラック企業“で長年にわたり心身を酷使した生活習慣が、生来蒲柳の質でなかろう…

男と女のこと│「源氏物語」と「鬼平犯科帳 本所・桜屋敷」

古今、セーフティーネットがなければ、堕ち行く先は奈落の底である。駿馬の骨やら卒都婆小町等々は、袖にされた野郎共や政敵がざまあ見ろと噂したであろう老残の風姿である。(尤も貶めたつもりが、描かれた彼女等は老驥櫪に伏すともの気概に満ちる。)それ…

十六夜の月│頂いたお花を生ける

もろともに大内山は出でつれど入る方見せぬいさよひの月 源氏物語・末摘花 頭中将

今宵は中秋の名月│頂いたお花を生ける

百首歌奉りし時、月歌 いつまでか涙曇らで月は見し秋待ちえても秋ぞ恋しき 新古今和歌集・巻第四 秋歌上 前大僧正慈円

送り火を焚く

三界唯一心 心外無別法 心仏及衆生 是三無差別 一つ根に心の種の生ひ出でて花咲き実をば結ぶなりけり 聞書集 西行

令和六年夏の盆法要

人記品 寿命無有量 以愍衆生故 思ひありて尽きぬ命の憐みをよそのことにて過ぎにけるかな 聞書集 西行

立秋の日

立秋日登樂遊園 白居易 獨行獨語曲江頭 獨り行き獨り語る 曲江の頭(ほとり) 廻馬遅遅上樂遊 馬を廻らすこと 遅遅として樂遊に上る 䔥颯涼風与衰鬢 䔥颯(せうさつ)たり 涼風と衰鬢(すいびん)と 誰教計會一時秋 誰か計會して 一時に秋ならしむる 巻十九 律詩…