奈良の石上寺にて郭公の鳴くをよめる
いそのかみふるき都の時鳥声ばかりこそ昔なりけれ
古今和歌集・巻第三 夏歌 素性法師
奈良公園の神鹿が行く
春日参道 Way to the Kasuga Shrine│吉田 博 昭和拾三年
奈良公園の鹿は春日大社の神の使い、神鹿(しんろく)として保護されている国の天然記念物である。本年3月、県境を越えて約30kmも離れた大阪市で迷い鹿が目撃された。捕獲された一頭の雄鹿は大阪府の能勢温泉に移送され大切に飼育されることになった。奈良県からの差し入れの鹿せんべいを喜んで食べたらしい。奈良から移動した鹿の可能性が指摘されるも、区域外を離れた個体は野生動物としての扱いになり再び元の地には戻れない。片雲の風にさそわれて、漂泊の思いやまず。将又、筒井筒の男が生駒山を越えて高安の女に通いつめた様に、所願心にきざすところがあったのか。俺の前に道はない、俺の後ろに道ができる。新天地での健やかな鹿生を祈りたい。シカやんに幸あれ。
